夫婦のものがたりが詰まった宝箱「quilt」

友人の梶山ひろみちゃんが、夫婦ふたりの想いを縫い合わせる「quilt」をはじめた。

quilt はインタビューを通して、夫婦それぞれがこれまで歩んできた道、一緒にこれから歩んでいく道にそっと光を照らしてくれるプロジェクト。妊娠7ヶ月の頃、このすてきなプロジェクトを一足先に夫婦で体験させてもらった。

夏がはじまる、ある週末。自宅にて、まずは撮影が行われた。写真を撮ってくれるのはひろみちゃんの夫であるカメラマンの岩本良介さん。

2人で料理をつくって、みんなで食卓を囲み、おやつを食べて、散歩に出かけ、近所の植物園でアイスを頬張り、家のソファで私は本を読み、夫は疲れて眠りに落ちる。そんな私たちのなんでもない“日常”が切り取られていった。結婚式などハレの日ではない、いつもの飾らない2人をプロに撮ってもらうことははじめてだったので新鮮だった。

そして、インタビュー。事前に書いた年表をもとにひろみちゃんが質問を投げかけてくれ、応えていく。幼少期にどんな環境で育ち、どんなものに影響を受けたのか。どんな仕事を経験し、今どんな思いで働いているのか。

夫の話しを横で聞いていて、なんとなく知っていたことが深まったり、新たな一面を知ったり。

自分自身の話しをしていて、ああこんなことがあったなあと昔を思い出したり、こんなことを考えていたんだと新しい考え方に気づいたり。

過去・現在・未来に思いを馳せて、言葉にしていく過程で、いろんな出来事や想いが溢れ出てきて、お互いのこれまでの人生と“今“の輪郭が浮かび上がる。

夫婦で、それぞれの人生が交わり今に至るまでの出来事を振り返り、子どもを授かった今の気持ちを伝えあい、これからどんな家族でいたいかなど思い描く未来を共有することができた。

普段インタビューを受けることも、身近な人のインタビューを聞くこともほとんどないからこそ、客観的な視点が入ることで、見える世界がある。

かたちになったquiltは、我が子が生まれた1週間後くらいに、里帰り先である実家に届いた。箱を開けて、ていねいに編まれた冊子の1ページ1ページをゆっくりとめくる。そこには、夫と私、そして娘、新しい家族のはじまりのものがたりが詰まっていた。

出産直後で実家にいたので、私の次にこのものがたりを読んだのは、両親だった。父も母もやさしい表情でページをめくっていた。親になった今、私にもその柔らかな表情の理由がわかる。私のこれまでの人生に寄り添い、家族を持つしあわせを一番に喜んでくれた2人だから。

この我が家の小さな宝箱のようなquiltを私は、いつか娘に読ませたいと思う。あなたが生まれる前、お父さんとお母さんはどんな人生を歩んできて、どんな気持ちであなたを家族に迎え入れたのか。なかなか伝える機会は少ないように思うから、良きタイミングでそっと贈りたい。娘はどんな気持ちでページをめくるんだろう。

かたちになったquilt の読者は自分たちであり、両親や子どもといった大切なひとたち。

quiltというプロジェクトを通して、自分の人生、夫婦の日常、家族のこれからが、なんだかとてもいとおしくなった。撮影やインタビューなどかたちにするまでの過程、かたちになったものが読み継がれていく未来、そのすべてにこのプロジェクトの価値があると思う。

ひろみちゃんはこのプロジェクトは自身の「仕事」に対する挑戦だと話していた。ひろみちゃんとはお互いに編集やライターの仕事をはじめる前から、定期的に会って、美味しいごはんを食べながら、色んな想いを共有してきた(このプロジェクトの話しを聞いたのは、「砂の岬」だったなあ)。

ひろみちゃんはこれまでも、女性の仕事と生き方と向き合う「しごととわたし」や親の反対と夢をテーマにした「舵を取る人」など、自分の興味を掘り下げて、自ら旗を掲げて、取材をして言葉にしてかたちにしてきた。今回のquiltも「暮らしを手放さずに働くことはできないのかな?」という思いから、「自分の仕事をつくる」ための第一歩だと言う。

迷いもがきながらも彼女は常に、自分の仕事や生き方に対して、素直で誠実だ。その姿は、友人として尊敬しているし、同業者としてもいつも刺激をもらっている。

ひろみちゃんが夫婦ではじめたプロジェクトだからこそ、応援したいし、心からおすすめしたい! 

結婚や出産など特別な日だけじゃなく、なんでもない日に自分たちに贈るのもいいし、両親にプレゼントするのもいいな。きっと夫婦の“日常”がいとおしくなり、これからの家族をつないでいくものになると思う。

興味のある方はぜひ、quiltのHPを!


※写真提供:すべてquilt

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